We keep this love in a photograph

大都市は並ぶビル、人、車、ゴミの量によって汚れた表面上の美しさを醸し出していた。闇が奥深くに隠れていた。それを誰もがはっきり確認しているものの手を出す事はなかった。ただ闇は闇のままだった。

 

新宿から京王線で4.5駅いったところに彼は住んでいた。汚れたアパートの2階に住む彼はワンルームの狭くお世辞にも片付けられているとは言えない部屋を寝床にし、なんとか意識を保っていた。惨め以外なにも残らないその姿は東京の闇そのものを映し出しているようだった。昼間にもかかわらずカーテンも窓も締め切られていて甘い特別な香りが充満していた。外の光がほとんど閉ざされた部屋に小さな通販番組だけが灯りを灯していた。彼は音量がゼロにされている画面を瞬きも忘れたようにじっと見つめ続ける。

思考がぐるぐる回り言葉にする事さえもできない。感じた事のないスピードで言葉や思考が脳内を駆け巡っては遠くに消えていってしまう。とても大事な物がものすごいスピードで通りすぎては消えてしまい、失ってしまうようだった。彼はそれを全身を使って止め、拾い集めようとした……が、とてもじゃないができなかった。全身を使って止め続ける間にもかけがえのない物が彼を通り過ぎてしまう。結局彼はなに1つ自分の物にできず高速道路の真ん中でしゃがみ込んでしまう。それでも止まらない。目を瞑ろうが頭を抱え込もうが隣を幾多の塊が通り過ぎた。

 

しばらくして彼は目を開けて息を荒くしながらパソコンに近づき音楽をかけた。

 

 

円が見えた。

 

頭の中に1つの大きな円が見える。それはリズムを表した。1つの点が見えた。点は円の中心を正確に通り、円の端と端をつないだ。さまざまなスピードを持った点が正確に円の中を動いた。音色を持つ点も現れた。和音の点も現れた。すべてがリズムとして別の動きをしながら共鳴していた。そしてもう1つ点が現れた。頭にはっきりと…その点は自由に踊った。この世界を、自由に、思うがまま、だれもが予測出来ない動きで、縦横無尽に動き回った。点は言葉を含んでさらに自由に自分を表現した。そして点はさらに増えた。この点も自由に踊った。ただこの点は言葉を持っていなかった。その代わりに言葉にはない音色を持ち合わせた。大きな円の中でいくつもの点がそれぞれの個性を持ってリズムに合わせて自由に踊った。

それはこの闇をすこし晴らす事のできるような気がした。彼は視覚、嗅覚、味覚を捨て聴覚と触覚を頼りに頭の世界に飛び込んだ。そこには6つ目の感覚が存在した。。。

 

ここで時間がきた。

彼は急に睡魔に襲われた。そしてたまらないほどお腹が空いた。白飯をレンジを温めて塩をかけて食べた。

涙が止まらなかった。

旨かったからではない。

さまざまな記憶が頭を張り巡らせたからである。

映画でハクからおにぎりをもらう千尋の気持ちが分かった気がした。

白米には恐ろしい力があると思った。

千尋のように泣いた。そして白飯をなぜか急いでかきこんだ。

また虚しさと惨めさと孤独が彼を襲った。

 

 

気づけば彼は眠りについていた。

 

 

誰よりもよく知る彼を私は闇から見続けた。